デモムービーの制作について |
[制作日記] / [2009-09-11 17:54:23] |
皆様、はじめまして。デザイナーの中尾です。
「機動戦士ガンダム戦記」では、主にデモムービーの制作を担当しました。
今回は、自分が担当したデモムービーをどのように作り方上げたかについてや、アニメ制作会社であるサンライズさんとの共同作業についてお話ししたいと思います。
開発当初、本作のデモムービーは現在のような「完全なムービー」ではなく、「リアルタイム実機デモにセルキャラクターを合成する」という方法で制作していました。また、内容もステージごとに「スタートデモ/ボスキャラ登場デモ/エンドデモ」などを、それぞれ各2、3カット程度で構成し、あくまでもゲームを盛り上げる演出として、制作を進めていました。
しかし、開発が進むに連れて、本格的なシナリオの導入や、サンライズさんと協力してのアニメーション制作などが決まり、当初予定していた方式では制作が困難となりました。結果、キャプチャーしたCGデモにアフターエフェクト(以後AE)でセルを合成するという方法に制作方針を変更し、現在のようなムービーが完成したのです。
<デモムービー制作手順>
それでは、実際にどのようにデモムービーを制作したかについて説明します。
まずは下図をご覧下さい。
この画像は完成画像です。MAYAで作成したシーンを開発機上で再生しながら光源等の各環境を調整した後、画像を出力、AFでセルと合成して画像を制作しました。
AEでの合成作業のためにMSと背景は、切り抜き用のマスクで別々に出力しました。
下図のゲルググのハッチやMS格納庫内のカットもMSと背景を別出力してから合成しています。
ちなみに出力データのサイズは1920×1080サイズです。
さらに、MS、背景、マスクパターンを別々に出力するため、1カットにつき7枚以上のデータを出力しなくてはなりませんでした。
1.BG1
2.BG2
3.BG2マスク
4.MS1
5.MS1マスク
6.MS2
7.MS2マスク
※場合によってさらに増える
それぞれ、ムービー秒数×30枚の画像を用意しなくてはならないので、あっというまにハードディスクがいっぱいになります。これまでのゲーム開発ではここまでの容量のデモは想定していなかったので、何度もハードディスクを増設、追加購入することになりました。
実際にセルとの合成を行うにあたっては、アニメ演出家の遠藤広隆さんという方にアニメーション業界での制作手法をご指導いただいたこともあり、技術面では比較的すんなり行きました。CGとアニメの違和感を抑えるために、苦労すると想像していたので助かりました。
品質面では遠藤さんを始め、サンライズさんの制作スタッフからのアドバイスを頂き、これまでのゲームムービーにはない、かなり良い物になったかと思います。カメラワークとかMSの演技、あと色味については何度も修正しました。特にユーグがRX−81を見上げるシーンのカメラパンは特に調整を繰り返しました。
下図はサンライズさんが行った背景へのレタッチが良く分かるシーンです。ムービーの背景はゲーム用のステージと同じものを使っているのですが、このレタッチが行われたことにより、クオリティが大きく向上しています。
背景レタッチの件を含め、アニメ制作スタッフのクオリティ追求に対する姿勢が半端でなく、リテイク・修正等の回数がとても多く大変でした。
その分、格好いいムービーが出来ていると思いますので、ムービー閲覧機能を使って、これはこんな手順で作られたのか、など別の視点から見てみてください。
<アニメ制作スタッフとの共同作業について>
今回のムービーは、アニメ制作スタッフとの協力により完成しました。
サンライズさんのスタッフたちのクオリティに対する追求が凄く、最初の打ち合わせから全力で、色々な意見がぶつけられました。シナリオ、画コンテ、キャラデザインなどに、何度もこだわりにこだわりを重ね、1度OKが出たキャラデザインをさらに直すなどの姿勢に強い刺激を受けました。
動画枚数の当初の予定よりも遙かに増え、実際作画が上がってきたときは他のスタッフからも”凄い動く!”と驚きの声も上がっていたほどです。カット数も多いのですが、全てのシーンでとにかく動くので動画の枚数も相当です。サンライズさんからの納品でデータと一緒にカット袋も送られてくるのですが、制作作業中はそれが机と床に高々と積まれていました。
共同制作は、他業種のノウハウに触れる機会は滅多にないので面白い機会でしたが、どうだったかと聞かれてまず頭に浮かぶのは”大変だった”の一言です。
アフレコ用テープを徹夜で仕上げて当日ギリギリに発送したこととか、初号試写に間に合わせるために編集・出力・録画を夜通しで作業したり。ツールの不慣れやハードディスクのコピー、レンダリング等にかなりの時間を費やして、徹夜作業につき合ってくれた、演出家の遠藤さんを長い時間、待たせしてしまう時もありました。本当に申し訳なかったのですが、そんな合間に業界の話を聞けたのは楽しくもありました。
<デモムービー制作を終えて>
ちょうど1年前、去年の夏の終わり頃から実作業も後半戦にさしかかり忙しさがピークを迎えました。毎日15時ごろサンライズさんからハードディスクでセルデータが届き、原画にあわせて作っておいたCGパートの動画を組み合わせて本作成・レンダリングになります。
平行して、CGパートの出力作業を行いつつ、さらにデモ専用のモデルやテクスチャー制作、サンライズさんからのリテイクもガンガンでます。こういう状況が毎日のように続き、とても終わる気がしなくなってきます。
「これ本当に終わるんですか?」ヘルプに入ってくれたスタッフからもそんな言葉が飛び交います。先のことを考えると気が遠くなりそうなので、目の前の仕事を終わらせる事だけに集中しましたが、それでも気力的に”やばいかな”と思う時もありました。
そんな時は他のスタッフの存在が助けになりました。休日返上で協力してくれたスタッフには本当に感謝しております。おかげで良いものができました。他にも効果音担当の大場さんにもギリギリのスケジュールでご迷惑をおかけしました。
また、サンライズさんの制作スタッフの方にもずいぶん助けていただきました。
書きながら思い出していくとキリがないですね。
デモムービー制作に関わったすべての皆さん、本当にお疲れ様でした。
このような、たくさんのスタッフの努力により「機動戦士ガンダム戦記」のムービーは完成しました。
努力のかいがあり、とても良いものに仕上がっていると思います。
本当はソフトを購入して、HD画像のムービーを見て欲しいのですが、この公式HP上のPVでも「ムービー」を見ることはできますので、ぜひムービーをご覧になってください。
では、「機動戦士ガンダム戦記」を宜しくお願いいたします。 |
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