こんにちは。開発ディレクターの浪川です。
今回は「機動戦士ガンダム戦記」に登場するモビルスーツのモデル&
モーションに関する開発エピソードをご紹介したく思います。
たとえビームライフル1発で撃破される旧ザクであっても、デザイナーさん達は
愛情を注ぎ込み制作しております。この場を借りて、その一端でも感じて頂けたら
嬉しいです。
モデル制作を担当した綿引さんとモーション制作を担当した山本さんから、
制作上のこだわりや工夫した点について、コメントをお読みください。
1.モビルスーツのモデル制作について(モデルデザイナー:綿引)
モビルスーツのモデリングを行う際に苦労した点は多数ありますが、特にプロポー
ションの調整は試行錯誤の連続でした。原作のデザインやプラモデルの形状を忠実に
再現するとゲーム上で動かした時に不自然になってしまいます。しかし、ゲーム上
での扱いやすさを重視しすぎると、元のデザインの良さが失われてしまいます。
なんとか、この2つの要素を両立するために色々と工夫しました。特にドム系
MSのプロポーションは、かなり良く出来ていると思いますので、
じっくりと鑑賞して見てください。
あと、苦労した点がもう一つあります。それはMSの質感です。本作には本当に
たくさんのモビルスーツが登場するので、イフリート・ナハトのように暗い単色の
MSとガンダム7号機の様な真っ白で明るいMSが並んで画面に表示される様な
ことが頻繁に起こります。このような両極端な色調のMSが、どちらもカッコ良く
見え、同じ世界に存在しても画面が成立するように、何度も調整を繰り返しました。
また、MSの質感について、本作ではアニメで行うような演出的なハイライトを
ゲーム中で再現するという、特殊な試みを行っています。背景との馴染みを
良くするために抑えた表現になっていますが、ガンダム戦記独自のシェーダー※と
して面白い効果が出ています。
下の画像がシェーダーがOFFの状態(テクスチャー※のみの画像)です。
続いて、シェーダーがONになった状態です。独自シェーダーを当てる事で
質感が変化し、格好良さがアップしていると思います。
2.モビルスーツのモーション制作について(モーションデザイナー:山本)
モビルスーツのモーションを制作する際に「重量感を残しつつ躍動感を出す」と
いう点と「アニメ的な誇張表現を行う」という方針を設定しました。兵器として
の重さを表現しつつ、軽快な操作感を実現、さらにアニメの動きやポーズを
なるべく取り入れようという、贅沢かつわがままな試みです。この方針を実現する
ために、残業と休日出勤の毎日が続きました。まだまだ改善すべき点はありますが、
アニメの動きやポーズを取り入れるという点については、うまくいったと思います。
ギャンの動きは、テキサスコロニーでの戦いのポーズを参考にしました。
あまり動いていないポーズだけのカットを参考に脳内補完して動きをつけました。
アッガイの動きも凝って作りました。しゃがみポーズ、歩き、腕部メガ粒子砲の
構えに、アッガイらしさが感じられると思います。射撃から格闘、格闘から射撃へ
の切り替え時のモノアイの動き、ダウンから立ち上がる際のモノアイの動きにも、
こだわりと愛情を込めたので注意してご覧ください。
以上、デザイナーからのコメントでした。
ちなみにモーション担当の山本くんは、自らの肉体を実験台にMSのモーションを
研究していました。実際にギャンを真似て剣を構えたり、ガンダムっぽく銃を
構えたり、傍から見るとアホ丸出しでしたが、情熱を傾けて、ひたすら動きを
追求していました。
こんなスタッフのこだわりや情熱が皆さんに伝わり、
ゲームをより楽しんで頂けたらと思います。
※テクスチャー:3Dモデルの材質などを表現するために貼り付ける画像のこと。
※シェーダー:物体表面の凹凸や環境効果をテクスチャーに加える処理のこと。 |